夫婦喧嘩が子どもの脳を傷つける原因になる―という驚きの研究結果が、こんかい明らかになりました。
福井大学とハーバード大学が、アメリカ人を対象に行った調査では、日常的に両親の暴力や暴言に接してきた子どもたちは、脳の視覚野の一部が萎縮していたとがわかりました。
記憶力や学習に影響が出る可能性もあり、どんな夫婦げんかが子供に悪影響を与えるのでしょう。
あなたの家庭は大丈夫ですか?
今回はそんな夫婦喧嘩が子どもに与える、悪影響についてのはなしです。
目次
夫婦喧嘩を目の前でする前に!子供にとって”家族”という場所の意味と役割
子どもたちは、家庭に生まれて家族の中で生活をしながら社会や人との関わりを学びます。
親や兄弟などと接しながらことばを覚えますが、それ以上に今後の人生で重要な人間関係の形成を学んでいます。
子供にとって家族は生活の場であるとともに学習の場でもあります。
また、まだ世界の中心が家庭である未就学児にとって、家族はたった一つの世界であり、親は自分を守る絶対的な存在となります。
夫婦げんかが子どもの脳に悪影響
夫婦げんかの積み重ねが、子どもを傷つけているかもしれません。
最新の研究で夫婦間の暴言がもたらす、新たなリスクが科学的に明らかになりました。
日常的に両親のケンカに接した子どもは、脳の一部が萎縮して、ゆがんだ言動や学習が遅れるなど様々な影響が生じるというのです。
夫婦喧嘩のチェックリスト
「夫婦間の暴言」が子どもの脳に与える影響を調べるためのチェックリストです。
子ども自身に自分の家庭環境を想起しながら、答えてもらうものです。
福井大学とハーバード大学が、アメリカ人を対象に行った調査では、スコアが40点以上だった子どもの脳の一部が萎縮していることが確認されました。
子どもが暴言をどれくらいの頻度で聞いていたか。
【採点】
15個の質問に対して、0~7で回答をお願いします。
・一度もない/0点 ・2年に1回/1点 ・1年に1回/2点 ・1年に2~3回/3点 ・毎月/4点 ・毎週/5点 ・週に2~3回/6点 ・毎日/7点
15個の質問の合計点が、スコアになります。
両親がお互いのパートナーに対して、
- 叱りましたか?
- 大声をあげましたか?
- 罵りましたか?
- おこなったことを責めましたか?
- はずかしめましたか?
- 危害を加えると脅しましたか?
- 気分を悪くするような悪口を言いましたか?
- バカで行動が幼稚だと言いましたか?
- 行はなかった行為について責めましたか?
- 人前でバカにしたり、恥をかかせたりしましたか?
- 批判しましたか?
- 明らかな理由なしにヒステリックに怒鳴りつけましたか?
- 無能で価値のない人間だと言いましたか?
- 無能で価値のない人間だと感じさせるようなことを言いましたか?
- 声を荒げましたか?
〈福井大学・ハーバード大学調査より〉
見ているしか無い子どもがいちばん傷ついています
言葉による夫婦げんかは、子どもにとってそうとう脳に響きます。
目撃者の子どもが傷ついているのです。
どのご家庭にも夫婦げんかはあるのですが、それが行き過ぎてしまったり何回も繰り返してしまうと、子どもに人体的な被害はなくても目撃するだけで、心や脳にダメージがあるということが分かってきました。
「日本発達神経科学会理事 医師 脳科学者 福井大学教授 友田明美氏」
脳のメカニズム
子どもが日常的に夫婦の暴言に接すると、脳の海馬や扁桃体に異常をきたし、怒りや不安を感じやすくなるので、視覚野の一部も萎縮して、記憶力や学習能力の低下が進んでしまいます。
【脳の萎縮率】 年齢層と学歴が同じ 18~25才
・両親のケンカで暴力を目撃し続けてきた子ども 3.2%
・両親のケンカで暴言を聞き続けてきた子ども 19.8%
暴力よりも暴言のほうが6倍も脳が萎縮することが分かりました。
長年の研究から、暴力よりも暴言のトラウマの方が、取り除きにくいと感じてきました。
この研究の結果を見たとき、ああ、やっぱりそうだったのかと思いました。
お互いに暴言を言い合ってる状態をみているだけで、これはすごいダメージになると認識せざるを得なくなってきました。
自分には何の責任もない子どもが苦しむことになるといった後遺症は、自分の努力で何とかなるもじゃないので、けっして自分を責めないでいただきたいのです。
アメリカで調査した結果は、チェック表の40点以上で、夫婦げんかが子どもに悪影響を及ぼすとされています。
ですから、親は気をつけて子どもの目の前で激しい夫婦げんかを、ぜひ避けていただきたい。
「精神科医 杉山登志郎氏」
無視でも子どもに悪影響
夫婦間の無視や冷戦でも子どもに悪影響がでてきます。
自分がどうにかしないと両親が壊れてしまうのではないか?
子どもにとって良いことが起きた時は、自分ががんばったから良いんだと思い込む。
辛いことがあっても自分のせいではないかと。
幼児的万能感と言ったりするけれど、両親の冷戦状態は自分のやり方しだいでは、仲良くなれ
るんじゃないかと思い自責感が強くなる。
日本臨床心理士会理事 夫婦・子どものカウンセリング専門 信田さよ子氏
夫婦げんかを減らす極意
- 主語は「あなた」ではなく「私」に。
いつも・でも・どうせ・だって はなるべく遣わな - 決めつけでいわない
- 大事な話は場所を変える。
公園やカフェなど - 夫婦はお互いに思っていることをぶつけあう時間をつくることが大切である。
【宝物ファイル】を作成する。
- 自分の長所を紙に書いていく。
- 友達や親からも長所を書いてもらう。
- 100点のテストや賞状など
これらを全部ファイルしていく。
【宝物ファイル】を何度も見直すと自己肯定感
「宝物ファイルに入れて形に残しておけば、いつでも見返すことができる。
どの子どもにも必ず良いところがあるということを、いつまでも忘れないでいただきたい。
と語る岩堀さん。
この取り組みは・両親のケンカに悩む子どもを数多く救ってきた。
このファイルを見て親が子どもの長所に気づいた時、子どもの態度や行動が落ち着くという
子どもを守るには心の傷をしっかり克服するケアをすると、大人の脳でも回復するということが分かっている。
子どもの脳も回復して元気になる可能性が充分にある。
お気に入り詳細を見る家庭でできる子どもの心のケア
- 親が子どもの言葉を繰り返してあげる。親が自分に目を向けていることがわかるから。
- 子どもの行動を言葉にする。自分の行動を理解しているとわかるから。
- 夫婦げんかの理由を説明して、あなたのせいじゃないと伝えること。仲直りしたら、仲のいい姿を見せること。
福井大学 特別研究員 岩堀 美雪
まとめ
夫婦喧嘩は二人だけの問題では無いことがよくわかりました。
子供が小さく言葉も話さないとなると、分からないだろうと思うかもしれません。
しかし、言葉として理解出来ないとしてもトラウマとなって、その子が大人になっても影響が残ります。
常に子供に不安を与えず、安心感を与えることが大事なことなのです。